コレステロールが高いとどうなる?

2026年01月23日
コレステロールが高いとどうなる?

健康診断の結果を見て、「コレステロール値が高い」という判定にドキッとしたことはありませんか? 「特に体調は悪くないし、まだ大丈夫だろう」「食事を少し気をつければ下がるはず」 そう考えて、再検査や受診を先送りにしてしまう方は少なくありません。

しかし、調査データによると、多くの患者さんが「自覚症状が全くなかった」と回答しており、これが発見を遅らせる大きな要因となっています。 コレステロールが高い状態は「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれ、自覚症状がないまま静かに血管を蝕み、ある日突然、命に関わる病気を引き起こす最大のリスク因子の一つです。

この記事では、コレステロールが高いと具体的に体の中で何が起きるのか、放置するとどうなるのかを医学的な視点から詳しく解説します。また、実際に高値を指摘された方々のリアルな体験談や、今日から始められる食事・運動による改善方法もご紹介します。

そもそも「コレステロール」とは何か?本当に悪者?

「コレステロール=体に悪いもの」というイメージが強いかもしれませんが、実は私たちの体にとって生きていくために必要不可欠な成分です。まずはその役割と種類について正しく理解しましょう。

体内での重要な役割

コレステロールは一種の「脂質」であり、以下のような重要な働きを担っています。

  • 細胞膜の材料: 人間の体は約37兆個の細胞でできていますが、その細胞を包む膜の構成成分となります。
  • ホルモンの原料: ストレスに対抗する副腎皮質ホルモンや、男性ホルモン・女性ホルモンなどの性ホルモンの材料になります。
  • 胆汁酸の原料: 脂肪の消化・吸収を助ける胆汁酸を作るために使われます。

このように、コレステロール自体は決して悪者ではありません。問題なのは、その「量」と「バランス」が崩れてしまうことなのです。

LDL(悪玉)とHDL(善玉)の違い

健康診断の結果表でよく目にする「LDLコレステロール」と「HDLコレステロール」。これらはコレステロールそのものの違いではなく、血液中でコレステロールを運んでいる「乗り物(リポタンパク質)」の違いです。

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
  • 肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞へ運ぶ役割があります。
  • しかし、血液中に増えすぎると血管の壁に入り込み、溜まってしまいます。これが動脈硬化の直接的な原因となるため、「悪玉」と呼ばれます。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
  • 全身の組織から余分なコレステロールを回収し、肝臓へ戻す役割があります。
  • 血管壁に溜まったコレステロールを引き抜く働きもあるため、動脈硬化を防ぐ「善玉」と呼ばれます。

つまり、「LDLが高すぎる」ことだけでなく、「HDLが低すぎる」ことも同様にリスクとなります。近年では、この両方のバランスを示す「LH比(LDL÷HDL)」も重要視されています。

コレステロールが高いとどうなる?(サイレントキラーの正体)

コレステロールが高い状態(脂質異常症)を放置すると、体内ではどのような変化が起きるのでしょうか。

最大の恐怖は「自覚症状がない」こと

血圧が高いと頭痛がしたり、血糖値が高いと喉が渇いたりと、何らかのサインが出ることもありますが、コレステロールが高くても自覚症状はほぼありません。 調査でも、無症状ゆえに見落とされがちであることが指摘されており、これが対応の遅れにつながるケースが見られます。 「痛くも痒くもない」 これが最大のリスクです。本人が気づかないうちに病状が進行し、発見された時にはすでに手遅れに近い状態になっていることも珍しくありません。

血管の中で起きている「動脈硬化」のプロセス

血液中に過剰なLDLコレステロールがあると、血管の内皮細胞の隙間から血管壁の内側に入り込みます。そこで活性酸素の影響を受けて「酸化LDL」に変化します。

これを処理しようと免疫細胞(マクロファージ)が集まってきますが、酸化LDLを取り込みすぎて死滅し、ドロドロとした粥状(じゅくじょう)の塊である「プラーク」を形成します。

  1. 血管が狭くなる: プラークが大きくなると血管の内腔が狭くなり、血液の流れが悪くなります。
  2. 血管が硬くなる: 血管の弾力性が失われ、もろくなります。これが「動脈硬化」です。

放置した先に待つ「3大疾病」のリスク

動脈硬化が進行すると、ある日突然、プラークが破裂(ラプチャー)することがあります。すると、その傷を修復しようと血小板が集まり、急速に血栓(血の塊)が作られます。この血栓が血管を完全に塞いでしまうことで、以下の重篤な病気が発症します。

  • 心筋梗塞・狭心症: 心臓に栄養を送る冠動脈が詰まると心筋梗塞、狭くなると狭心症になります。激しい胸の痛みや呼吸困難を伴い、命に関わります。実際に、放置していたら将来的に心筋梗塞や脳卒中になる可能性が高かったと診断されたケースも報告されています。
  • 脳梗塞: 脳の血管が詰まると脳梗塞になります。麻痺、言語障害、意識障害などが起こり、後遺症が残るリスクが高い病気です。
  • 閉塞性動脈硬化症(ASO): 足の血管が詰まり、歩くと足が痛む、冷える、最悪の場合は壊死して切断が必要になることもあります。

健康診断で「要治療」や「要再検査」と判定された場合、あなたの血管の中ではすでに動脈硬化のプロセスが始まっている可能性があるのです。

なぜ数値が高くなるのか?主な原因

コレステロール値が上がる原因は一つではありません。生活習慣、体質、年齢などが複雑に絡み合っています。

生活習慣の乱れ

最も一般的な原因です。調査結果でも、揚げ物や甘いもの、肉中心の食生活が数値悪化に影響していることが示されています。

  • 食事: 動物性脂肪(肉の脂身、バターなど)やコレステロールの多い食品の過剰摂取。
  • 運動不足: 日常的な運動不足は、HDL(善玉)を減らし、LDL(悪玉)を増やす大きな要因です。
  • 飲酒・ストレス: 毎日の飲酒習慣や、仕事のストレスも一因として挙げられます。

遺伝的要因(家族性高コレステロール血症)

「痩せているのにコレステロールが高い」「食事に気をつけているのに下がらない」 このような場合、遺伝的な要因が関与している可能性があります。 家族性高コレステロール血症は、生まれつきLDLコレステロールを代謝する力が弱く、血液中の数値が高くなる病気です。人口の200〜500人に1人程度いるとされ、若い頃から動脈硬化が進みやすいため、早期の治療が必要です。 実際、運動で中性脂肪は改善したもののLDLが下がらず、遺伝的要素が強いと診断された方の事例もあります。

加齢と性別(特に女性の更年期)

年齢層による傾向の違いも明らかです。

  • 30-40代: 健康診断での初発見が多く、生活習慣の乱れが主な原因となる傾向があります。
  • 50代以上: 特に女性は、閉経後のホルモンバランスの変化により急激に数値が上昇するケースが多く見られます。

女性ホルモン(エストロゲン)にはLDLコレステロールの上昇を抑える働きがあるため、閉経によってエストロゲンが減少すると、生活習慣を変えていなくても数値が上がることがあります。

数値を下げるためにできること(食事編)

ここからは、具体的な対策について解説します。まずは毎日の食事の見直しから始めましょう。

「控えるべき」食品

LDLコレステロールを上げる最大の要因は「飽和脂肪酸」の摂りすぎです。

  • 飽和脂肪酸: 肉の脂身(バラ肉、ひき肉、鶏皮)、バター、生クリーム、ラード、ココナッツオイルなど。
  • トランス脂肪酸: マーガリン、ショートニング、これらを使った菓子パンやスナック菓子、揚げ物など。
  • コレステロールを多く含む食品: 鶏卵(魚卵)、レバー、イカ、エビなど。

また、脂質だけでなく**「糖質の摂りすぎ」によるカロリーオーバー**も数値悪化の大きな原因になります(詳しくは後述のコラムで解説します)。

「積極的に摂るべき」食品

逆に、LDLコレステロールを下げ、動脈硬化を防ぐ食品を積極的に取り入れましょう。

  • 青魚(DHA・EPA): イワシ、サバ、サンマなどの脂には、血液をサラサラにし、中性脂肪を下げる効果があるn-3系脂肪酸が含まれています。
  • 食物繊維(特に水溶性): 野菜、海藻(わかめ、昆布)、きのこ、大豆製品、麦ごはんなど。水溶性食物繊維は、腸内でコレステロールを吸着し、体外への排出を促します。
  • 大豆製品: 納豆、豆腐などの大豆タンパク質には、LDLを下げる効果が期待できます。
  • 抗酸化食品: ビタミンC(ブロッコリー、ピーマン)、ビタミンE(ナッツ類、かぼちゃ)、ポリフェノール(緑茶、カカオ)などは、LDLの酸化を防ぎます。

実践!血管を強くする食事メニュー例

  • 朝食: 洋食(パンとベーコン)よりも、和食(ご飯、納豆、焼き魚、味噌汁)を選びましょう。パン派の場合は、バターの代わりにオリーブオイルを使い、野菜スープを追加します。
  • 昼食: 丼ものやラーメン単品は避け、定食スタイルを選びます。揚げ物定食ではなく、刺身定食や焼き魚定食がベストです。
  • 夕食: 肉料理にする場合は、脂身の少ないヒレ肉やささみを選び、野菜をたっぷり添えます。調理法も「揚げる・炒める」より「蒸す・煮る・焼く」がおすすめです。

脂っこいものを食べていないのに、なぜ高い?

「お肉の脂身は避けているし、揚げ物も食べていない。それなのに、なぜコレステロール値が下がらないの?」 診察室では、このような疑問を抱える患者さんが非常に多くいらっしゃいます。 実は、脂質異常症の原因は「脂(あぶら)」だけではありません。見落としがちなのが、「総カロリー(エネルギー)」の摂りすぎです。

ここでは、カロリーとコレステロールの意外な関係について、体の中で起きている「ドミノ倒し」のような仕組みを解説します。

① 余ったカロリーは「中性脂肪」に変わる

食事で摂った炭水化物(ご飯、パン、麺類)や糖分(お菓子、果物)は、体を動かすエネルギー源となります。しかし、消費しきれずに余ったカロリーは、肝臓で「中性脂肪」へと作り変えられてしまいます。 つまり、たとえ脂っこい食事を控えていても、「ご飯の大盛り」や「食後のデザート」でカロリーオーバーになれば、血液中の脂質は増えてしまうのです。

② 中性脂肪が「悪玉」を凶暴化させる

ここが最も恐ろしい点です。血液中に中性脂肪が増えすぎると、コレステロールのバランスを崩す「悪い連鎖」が起きます。

  1. 善玉(HDL)が減る: 中性脂肪が増えると、血管の掃除屋である善玉コレステロールが分解されやすくなり、数値が下がってしまいます。
  2. 悪玉(LDL)が小型化する: 中性脂肪が多いと血管の壁に入り込みやすい超悪玉(small dense LDL)コレステロールが増えます。これは通常のLDLよりも動脈硬化を強力に進める危険な存在です。
③ 「カロリーの質」も見直そう

数値を改善するためには、「脂質を減らす」ことと同じくらい、**「適正カロリーを守る」**ことが重要です。

  • 甘いもの: 洋菓子だけでなく、和菓子や果物の食べ過ぎも中性脂肪を増やします。
  • 炭水化物: 麺類とご飯のセットなど、糖質の重ね食べはカロリー過多の典型です。
  • アルコール: お酒自体にもカロリーがあり、おつまみが進むことでさらにカロリーオーバーになりがちです。

「脂っこくないから大丈夫」と油断せず、食事全体の量とカロリーバランスを見直すことが、血管を守る近道です。

数値を下げるためにできること(運動・生活習慣編)

食事だけでなく、運動やその他の生活習慣も大きく関わっています。

有酸素運動でHDL(善玉)アップ

運動にはLDLを下げ、HDLを上げる効果があります。特に効果的なのは「有酸素運動」です。 調査でも、日常的な運動不足が大きな要因とされており、自転車通勤などの日常的な変化でも改善が見られています。

  • 種類: ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど。
  • 強度: 「ニコニコペース(笑顔で会話ができる程度)」の強度が脂肪燃焼に最適です。
  • 頻度: できれば毎日30分以上、少なくとも週3回以上行うことが推奨されます。「まとまった時間が取れない」という場合は、10分×3回に分けても効果があります。

禁煙は必須条件

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管の内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を急速に進行させます。また、HDL(善玉)コレステロールを減少させる作用もあります。 コレステロール値が高い人が喫煙を続けることは、火に油を注ぐようなものです。血管の健康を守るためには、禁煙は必須の条件と言えます。

ストレスと睡眠

過度なストレスは交感神経を刺激し、血糖値や血圧を上げるだけでなく、脂質代謝にも悪影響を及ぼします。 仕事のストレスもコレステロール値上昇の一因として挙げられており、十分な睡眠とリラックスできる時間を確保することも立派な治療の一つです。

病院に行くタイミングと薬物療法

食事や運動を頑張っても数値が下がらない場合や、リスクが高い場合は、医療機関での治療が必要です。

受診の目安

以下に当てはまる場合は、早めに内科や循環器内科を受診してください。

  • 健康診断で「要受診」「要治療」の判定が出た場合。
  • LDLコレステロール値が180mg/dL以上の場合(家族性高コレステロール血症の疑い)。
  • 糖尿病、高血圧、慢性腎臓病などの持病がある場合(動脈硬化のリスクが跳ね上がります)。
  • 家族に心筋梗塞や脳卒中を起こした人がいる場合。

薬物療法について(不安とメリット)

「一度薬を飲み始めたら一生やめられないのでは?」「副作用が怖い」 調査でも、スタチン系の薬に対する筋肉痛や肝機能異常などの副作用への不安の声が挙がっています。

しかし、医師は患者さんの動脈硬化のリスクを総合的に評価し、メリットがリスクを上回る場合にのみ処方します。 実際、薬を処方されたことで「コレステロール値が正常に戻り、生活の質が劇的に向上した」というポジティブな体験談もあります。

  • スタチン系: 肝臓でのコレステロール合成を抑える、最も一般的で効果が高い薬です。
  • 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬: 小腸からのコレステロール吸収を抑えます。
  • フィブラート系: 主に中性脂肪を下げる効果があります。

自己判断で薬を避けるのではなく、不安があれば医師に相談し、納得した上で治療を進めることが重要です。

よくある質問(Q&A)

最後に、コレステロールに関してよく寄せられる質問に医師監修の視点でお答えします。

遺伝的な体質(家族性高コレステロール血症など)や、隠れ肥満(筋肉が少なく体脂肪率が高い)、甲状腺機能低下症などの病気が隠れている可能性があります。また、閉経後の女性はホルモンバランスの影響で痩せていても高くなる傾向があります。
以前は「1日1個まで」と言われていましたが、現在は一律の制限は撤廃されています。しかし、高コレステロール血症の人は、やはり食べ過ぎると数値が上がりやすい傾向にあるため、週に3〜4個程度に控えるなどの配慮が推奨されることが多いです。
特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品はあくまで補助的なものです。サプリメントだけで劇的に改善することは難しく、基本は食事療法と運動療法、そして必要に応じた薬物療法です。

まとめ:早期発見は「健康へのチャンス」です

コレステロールが高いと診断されたことは、ショックかもしれません。しかし、調査結果が示すように、これは「深刻な病気になる前に気づけた」という大きなチャンスでもあります。

動脈硬化は一朝一夕には進みませんが、血管は少しずつ痛んでいき、一度ダメージを受けると元に戻すのは簡単ではありません。症状がない「今」こそが、対策を始めるベストなタイミングなのです。

今回のポイントの振り返り

  1. コレステロールが高いと、痛みや体調不良がなくても血管の中では動脈硬化が静かに進んでいきます。
  2. 放置すると、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気のリスクが高まる。
  3. まずは「動物性脂肪を控える」「カロリー過多を防ぐ」「有酸素運動」を実践する。
  4. 70%以上の人が生活習慣の改善で効果を実感している。
  5. 遺伝や体質で下がらない場合は、迷わず医療機関に相談する。

「仕事が忙しくて通院する時間がない」「食事制限をどう進めればいいかわからない」 そんな悩みをお持ちの方は、オンライン診療を活用するのも一つの選択肢です。自宅にいながら専門医のアドバイスを受けられ、必要であれば薬の処方も可能です。

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監修医師

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