健康診断で「脂質異常症」と言われた方へ

健康診断の結果に「LDLコレステロールが高い」「脂質異常症の疑い」と書かれていて、驚いた経験はありませんか?
多くの方は自覚症状がなく、健診で初めて指摘されます。実際に脂質異常症と診断された人の9割以上が、無症状のまま発見されています。つまり、症状がないから大丈夫と思っていても、すでに進行していることが多いのです。
脂質異常症は放置すると動脈硬化を進め、将来的に心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患につながることがあります。この記事では、日本動脈硬化学会の最新ガイドライン(2022–2023年版)に基づいて、脂質異常症の診断基準や境界域の意味、対処法をわかりやすく解説します。
1. 脂質異常症とは?なぜ問題なのか

脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)のバランスが崩れている状態です。かつては「高脂血症」と呼ばれていましたが、脂質が高いだけでなく、HDLコレステロールが低すぎる場合も問題であることから現在の名称になりました。
脂質異常症の怖さは「自覚症状がほとんどない」ことです。血液中の脂質が多い状態が長く続くと、血管の内側にコレステロールが沈着して動脈硬化が進行します。これが心筋梗塞や脳梗塞などの生活習慣病の根本原因となります。
🔍 ポイント:脂質異常症は“サイレントキラー”とも呼ばれる静かな病気。気づかないうちに血管が硬くなっていくことがあります。
2. 脂質異常症の診断基準

脂質異常症の診断は、血液検査(空腹時採血)によって4つの主要な指標を測定し、次の基準値に基づいて判定します。(日本動脈硬化学会2022–2023年版)
| 検査項目 | 正常値 | 境界域 | 異常値(脂質異常症の診断基準) |
| LDLコレステロール(悪玉) | <120mg/dL | 120–139mg/dL | 140mg/dL以上 |
| HDLコレステロール(善玉) | ≥40mg/dL | — | 40mg/dL未満 |
| 中性脂肪(TG) | <150mg/dL | — | 150mg/dL以上 |
| non-HDLコレステロール* | <150mg/dL | 150–169mg/dL | 170mg/dL以上 |
*non-HDLコレステロールとは、「総コレステロール−HDLコレステロール」で求められる値で、LDL以外の“悪玉”コレステロールを含む総合的な指標です。
✅ 基準値を1項目でも超えると、脂質異常症と診断されます。
3. 診断はなぜ「空腹時採血」で行うの?

脂質異常症の診断は、12時間以上の絶食後(空腹時採血)で行うのが原則です。中性脂肪(トリグリセリド:TG)は食事による影響を大きく受けるため、食後採血では正確な数値が得られません。
ただし最近では、食後採血でも「non-HDLコレステロール」を用いることでおおよそのリスク評価が可能です。忙しくて空腹時採血が難しい場合は、医師に相談しましょう。
4. 「境界域」とは?放置してはいけない理由

健康診断で「LDLコレステロールが130mg/dL」「境界域」と言われた場合、多くの人は「まだ大丈夫」と思いがちです。「境界域」とは、脂質異常症と診断されるほどではないものの、基準値よりは高い状態を指します。境界域は“異常ではないが、正常でもない”状態。つまり体の赤信号の一歩手前で、動脈硬化のリスクが上昇し始めるサインです。
境界域の段階で生活改善を始めた人は、将来の心疾患リスクを大幅に減らせることがわかっています。逆に放置すると、次の健診で脂質異常症に悪化しているケースも少なくありません。
🩺 医療現場では「境界域=要注意・注意信号」と考えられています。
5. 診断基準のよくある疑問Q&A
6. 診断後にやるべき2つのステップ
生活習慣の見直し
まずは生活習慣を改善しましょう。薬よりも食事・運動・睡眠の影響が大きいことが多いです。
- 食事:脂っこい肉や揚げ物を減らし、魚・野菜・豆類を増やす。
- 運動:週3回以上、30分程度のウォーキングや自転車通勤などの有酸素運動。
- 禁煙・節酒:タバコはHDLを下げ、アルコールの摂りすぎはTGを上げます。
📊 成功例:「自転車通勤を2ヶ月続けてLDL229→143まで下がった」など、生活改善での効果も多く報告されています。*ただし個人差がありますので、効果は人によって変わります。
専門医への相談
「病院に行くべきか迷う」という声も多いですが、以下のような場合は必ず受診を。
- LDLが180mg/dL以上
- 糖尿病・高血圧など他の生活習慣病がある
- 境界域でも家族に脂質異常症がある
監修医師

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