
健康診断で「血圧が高め」と言われたけれど、自分が今どの段階なのかわからない…
そんな不安を抱えていませんか?
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、目立った自覚症状がないまま静かに進行し、やがて心筋梗塞、脳卒中、腎臓病といった命に関わる重大な疾患を引き起こす危険性があります。
しかし、高血圧は早期発見と適切な対策によってコントロールできる病気です。正しく血圧を測定し、自分の状態を知り、必要なケアを始めることが、将来の健康を守る第一歩となります。
この記事では、高血圧の基準値をはじめ、家庭での血圧の測り方、血圧を下げるためにできることを医師監修のもとわかりやすく解説します。
測る場所で違う?診察室血圧と家庭血圧の違い
一口に「血圧」といっても、実は測る場所や状況によって血圧値は変動します。高血圧の診断や管理では、特に「診察室血圧」と「家庭血圧」という2つの血圧が重要視されています。
診察室血圧
診察室血圧とは、医療機関で医師や看護師が測定する血圧を指します。診察室という慣れない環境では、緊張やストレスの影響を受けやすく、家庭で測るより血圧が高めに出る傾向があります。
そのため、診察室血圧だけを見て判断すると、実際の血圧状態を正確に把握できないこともあります。
家庭血圧
家庭血圧は、自宅などリラックスできる環境で自分自身が測定した血圧のことを指します。高血圧の診断・治療効果の判定・日々の血圧管理において、家庭血圧はとても重要な役割を担います。
家庭血圧には、以下のような特徴があります。
- 診察室血圧より実態に近い血圧値が得られる
- 日々の血圧変動を把握しやすい
- 生活習慣の改善や治療の効果を細かくチェックできる
そのため、最近では家庭血圧を重視した診療がスタンダードになっています。
家庭血圧で高血圧と診断される基準値は、診察室血圧よりもやや厳しく設定されています。一般的には、朝と夜にそれぞれ1~2回ずつ測定し、1週間程度の平均値で評価する方法が推奨されています。
高血圧の基準値とは?|年代別で違う?

高血圧の基準値は、診察室血圧と家庭血圧でそれぞれ異なります。
診察室血圧では140/90mmHg以上、家庭血圧では135/85mmHg以上が高血圧と診断されます。これは、診察室では緊張による血圧上昇が起こりやすいため、家庭血圧の方がより実態に近い値として少し厳しめに設定されているためです。
血圧の状態 | 診察室血圧(mmHg) | 家庭血圧(mmHg) |
---|---|---|
正常血圧 | 120/80未満 | 115/75未満 |
正常高値血圧 | 120-129/80未満 | 115-129/75未満 |
高値血圧 | 130-139/80-89 | 130-134/80-84 |
1度高血圧 | 140-159/90-99 | 135-144/85-99 |
2度高血圧 | 160-179/100-109 | 145-159/90-99 |
3度高血圧 | 180以上/110以上 | 160以上/100以上 |
正常と高血圧の間に位置する「正常高値血圧」や「高値血圧」は、将来的に高血圧へ進行するリスクが高い予備軍と考えられます。現時点で治療が必要なケースは少ないものの、生活習慣の改善と定期的な血圧測定が非常に重要です。
年代別の基準値
高血圧の基準値は、年齢によって大きく変わることはありません。ただし、加齢とともに平均血圧は上昇する傾向があります。
これは血管の老化によるもので、動脈硬化が進行することで血管の弾力性が失われ、血液をスムーズに送り出すことができなくなるためです。
年代別の平均血圧値
年代 | 性別 | 収縮期血圧(mmHg) | 拡張期血圧(mmHg) |
---|---|---|---|
20代 | 男性 | 115.9 | 68.1 |
20代 | 女性 | 105.7 | 63.8 |
30代 | 男性 | 117.2 | 73.8 |
30代 | 女性 | 108.0 | 66.4 |
40代 | 男性 | 125.4 | 80.6 |
40代 | 女性 | 113.7 | 70.9 |
50代 | 男性 | 129.7 | 81.0 |
50代 | 女性 | 121.8 | 74.5 |
60代 | 男性 | 134.1 | 78.3 |
60代 | 女性 | 130.6 | 76.7 |
70〜80代 | 男性 | 133.9 | 74.5 |
70〜80代 | 女性 | 133.1 | 73.9 |
同年代の平均と比べて血圧が高い場合は、動脈硬化の進行リスクが高まっている可能性があります。ただし、平均より高くてもすぐに治療対象になるわけではありません。あくまで基準値を超えているかどうかが診断の基準です。
高血圧の治療開始基準
日本高血圧学会のガイドラインでは、診察室血圧と家庭血圧でそれぞれ治療開始の基準が設けられています。
血圧値 | 治療開始基準 |
---|---|
診察室血圧 | 140/90mmHg 以上 |
家庭血圧 | 135/85mmHg 以上 |
ただし、これらの基準値に加えて、年齢や脳卒中や心臓病などのリスクも考慮されます。例えば、以下のような方は高リスク群とされ、基準値に達していなくても治療が開始される場合があります。
- 脳卒中・心臓病の既往歴がある方
- 糖尿病、慢性腎臓病、脂質異常症などの合併症がある方
- 喫煙習慣のある方
また、血圧が130/80mmHg以上の方でも、リスクが高いと判断されれば、生活習慣の改善指導と並行して薬物療法が開始されるケースもあります。
家庭での血圧の正しい測り方とは?

家庭での血圧測定は、高血圧の早期発見と、治療・生活習慣管理の効果を正しく評価するために欠かせません。しかし、測り方を誤ると血圧が実際より高めに出たり、日々の変動が正しく把握できなくなる恐れがあります。
ここでは、血圧計の選び方から、測定前の準備、正しい測定方法まで、医師が推奨する手順を解説します。
(1) 血圧計の種類と選び方
家庭用血圧計にはいくつかの種類がありますが、日本高血圧学会では「上腕式血圧計」を推奨しています。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
上腕式 | 測定精度が高く、医療機関でも使用されている | 手首式・指先式に比べるとやや高価 |
手首式 | コンパクトで持ち運びしやすい | 測定姿勢に左右されやすく、誤差が出やすい |
指先式 | 簡単・手軽に測定できる | 精度が低く、医療用としては推奨されない |
精度を重視するため、できるだけ上腕式を選びましょう。特にカフ(血圧測定用の腕帯)一体型ではなく、チューブでつながったセパレート型のほうが、より正確な測定が可能です。
(2) 測定前の準備
正しい血圧測定には、測定前の環境づくりがとても重要です。
- 測定前30分以内の喫煙・カフェイン摂取・激しい運動は避ける
- 排尿を済ませておく(膀胱に尿がたまると血圧が上がる)
- 5分以上安静にしてから測定する
- 室温は20〜25℃程度、寒すぎない環境で
- 服の袖をまくり上げず、素肌にカフを巻く
- 測定する腕を心臓と同じ高さに保つ
何気ない行動でも血圧に影響を与えるため、毎回同じ条件で測ることを心がけましょう。
(3) 正しい測定方法と記録の重要性
測定時の姿勢も非常に大切です。
- 椅子に深く腰掛け、背もたれに背中をつける
- 足は組まず、床にしっかりつける
- 測定中は話さない・動かない
- 1回の測定だけでなく、朝晩それぞれ2回ずつ測り、平均値をとる
家庭血圧の記録は、薬の効果判定や治療方針の決定に直結する大切な情報です。測定後は、必ず数値を記録するようにしましょう。
専用の記録用紙やスマートフォンのアプリを活用すると管理がしやすく、医師に正確な情報を伝える際にも役立ちます。
高血圧を下げる方法|生活習慣の見直しと薬物療法

高血圧には、大きく分けて「生活習慣の改善」と「薬物療法」という2つのアプローチがあります。
まずは生活習慣の改善から取り組み、それでも血圧が目標値に達しない場合に薬物療法が併用されるのが一般的です。どちらも「一時的な対策」ではなく、長期的に継続することが成功のカギとなります。
ここでは、具体的な改善ポイントを解説します。
生活習慣の改善
高血圧の発症や悪化には、食事、運動、喫煙、飲酒といった生活習慣が大きく関わっています。生活を見直すだけで、血圧を下げ、将来の合併症リスクを大幅に減らすことが可能です。
項目 | 内容 |
---|---|
塩分制限 | 1日6g未満を目指しましょう。ラーメンのスープは飲み干さない、だしや香辛料で味付けを工夫するなど、日常の小さな積み重ねが重要です。 |
栄養バランス | カリウムを豊富に含む野菜や果物、カルシウムを含む乳製品を積極的に。DASH食(野菜、果物、低脂肪乳製品中心の食事)は科学的にも有効性が認められています。 |
体重管理 | BMI(体格指数)を25未満に保つことで、血圧は大きく改善しやすくなります。無理のない減量を目指しましょう。 |
運動習慣 | 有酸素運動(ウォーキング、サイクリングなど)を毎日30分以上、または週150〜180分以上行うのが理想です。筋トレやストレッチも取り入れるとさらに効果的です。 |
節酒 | 飲酒量は男性でエタノール20〜30mL/日以下、女性で10〜20mL/日以下に制限。飲みすぎは血圧上昇に直結します。 |
禁煙 | 喫煙は血管を収縮させ、血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化を強力に促進します。禁煙は高血圧予防・改善に不可欠です。 |
すべて一度に完璧を目指す必要はありません。できるところから少しずつ取り組み、習慣化することが何より大切です。
薬物療法
生活習慣を改善しても、目標とする血圧に達しない場合や、すでに心血管リスクが高い場合は、薬物療法(降圧剤の服用)が必要になる場合もあります。
主な降圧薬には次のような種類があります。
- カルシウム拮抗薬
- アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB)
- アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
- 利尿薬
- β遮断薬
- α遮断薬
なお、薬を飲み始めても生活習慣の改善は必須です。薬だけに頼るのではなく、日々の努力と併用することで、より少ない薬で血圧コントロールが可能になることもあります。
高血圧の基準値に関するよくある質問
Q1. 正常高値血圧や高値血圧でも注意が必要ですか?
A1.はい、注意が必要です。正常高値血圧や高値血圧は、今すぐ治療が必要な段階ではないものの、将来的に高血圧へ進行するリスクが高い状態です。特に、ストレスの多い生活や塩分の多い食生活を続けていると、知らないうちに血圧がさらに上がり、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めることになります。
この段階で生活習慣を見直し、血圧を正常範囲に保つ努力を始めることが、将来の大きな病気を防ぐためには非常に重要です。
Q2. 血圧は朝と夜、どちらの値を重視すべきですか?
A2.家庭血圧の管理では、特に朝の血圧を重視します。起床後は血圧が自然に高まりやすいタイミングであり、早朝高血圧は脳卒中や心筋梗塞リスクと深く関わっているためです。
朝と夜の両方を測定することが望ましいですが、特に朝の血圧に注意を払うことが大切です。
Q3. 血圧は季節によって変動しますか?
A3.はい、血圧は季節によって変動することが知られています。特に冬は寒さによって血管が収縮し、血圧が上がりやすくなります。
一方、夏は汗による水分・塩分の喪失で血圧が下がることもありますが、室内外の温度差や脱水によるリスクもあるため油断はできません。季節に関係なく、定期的に家庭血圧を測定して変化を把握することが、リスクを早期にキャッチするために役立ちます。
まとめ:血圧を正しく知り、未来の健康を守ろう
高血圧は、目立った症状がないまま進行し、やがて心臓病や脳卒中、腎臓病などの重大な疾患を引き起こすリスクがあります。健康診断で「血圧が高め」と言われたら、まずは基準値を正しく理解し、家庭での血圧測定と生活習慣の見直しを始めましょう。
血圧は日々の積み重ねで変わっていくものです。小さな改善の積み重ねが、大きなリスク回避につながります。とはいえ、忙しくてなかなか病院に行けない…そんな方には、オンライン診療サービス『ヤックル』がおすすめです。
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