健康診断で「脂肪肝」と言われても、多くの人は「とりあえず経過観察でいいか」と思ってしまいがちです。
しかし実際には、脂肪肝の裏には糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病が隠れていることが少なくありません(Younossi et al., 2019)。
さらに脂肪肝(MASLD)は、心筋梗塞や脳卒中、肝硬変にまでつながる可能性があるため、「症状がないから安心」と考えるのは危険です。

脂肪肝と生活習慣病の隠れた関係
糖尿病
脂肪肝はインスリン抵抗性を悪化させ、糖尿病の発症リスクを高めます。逆に糖尿病があると脂肪肝の進行が速くなるため、両者は表裏一体の関係です(Eslam et al., 2023)。
高血圧
脂肪肝を持つ人は高血圧を合併する率が高く、心臓や血管の病気のリスクも増します(Targher et al., 2021)。
脂質異常症
中性脂肪やLDLコレステロールが高いと脂肪肝を悪化させ、動脈硬化が進みやすくなります。
つまり、脂肪肝は生活習慣病の“氷山の一角”にすぎません。
なぜ検査が重要なのか?
1. 初期は無症状だから
脂肪肝も生活習慣病も、初期にはほとんど症状が出ません。体調が悪くなるのは病気がかなり進んでからであり、そのときには治療が難しいこともあります。
2. 血液検査だけでは不十分
肝臓の数値(AST・ALT)が正常でも脂肪肝が進んでいる場合があります(EASL, 2021)。血液検査に加え、画像検査や追加検査が必要です。
3. 合併症を防ぐため
糖尿病や高血圧は、放置すると失明・透析・脳梗塞・心筋梗塞など重大な合併症につながります(Chalasani et al., 2018)。
脂肪肝と生活習慣病を見つけるための検査
血液検査
- 肝機能(AST、ALT、γ-GTP)
- 脂質(中性脂肪、LDL、HDL)
- 血糖(空腹時血糖、HbA1c)
画像検査
- 腹部エコー:脂肪肝の有無を簡便に評価
- CTやMRI:脂肪量や炎症の程度をより詳細に評価
特殊検査
- FibroScan・エラストグラフィー(肝硬度測定):肝臓の線維化を非侵襲的に測定
- 尿アルブミン検査:腎臓への影響を早期に発見
検査を受けるべき人
- 健診で脂肪肝を指摘された人
- メタボリックシンドロームに該当する人(腹囲・血糖・血圧・脂質の異常)
- 家族に糖尿病や心疾患がある人
こうした方は、症状がなくても積極的に検査を受けるべきです。
医療機関での取り組み
東京都目黒区の池尻大橋せらクリニックでは、肝臓・糖尿病・高血圧・脂質異常を同時にチェックできる体制を整えています。さらに、検査だけでなく運動療法や生活指導を取り入れ、生活習慣病の根本改善を目指しています。
まとめ
- 脂肪肝は生活習慣病と密接に関連し、放置すると糖尿病や高血圧が進行する
- 初期は無症状のため、検査で早期発見することが重要
- 血液検査だけでなく、腹部エコーや肝硬度測定など総合的な評価が必要
- 医療機関での定期的なチェックと生活改善が、合併症を防ぐ最も確実な方法
参考文献
- Eslam M, et al. A new definition for metabolic dysfunction-associated fatty liver disease: An international consensus statement. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2023.
- Younossi ZM, et al. Global epidemiology of NAFLD-MASLD: prevalence, incidence, and outcomes. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2019.
- Chalasani N, et al. The diagnosis and management of nonalcoholic fatty liver disease: Practice guidance from the AASLD. Hepatology. 2018.
- European Association for the Study of the Liver (EASL). EASL Clinical Practice Guidelines on non-alcoholic fatty liver disease. J Hepatol. 2021.
- Targher G, et al. Cardiovascular risk in patients with NAFLD/NASH. Nat Rev Cardiol. 2021.