在宅自己注射管理料と生活習慣病管理料の併用は可能?

2025年04月29日

糖尿病、この医療費は正しいの?

糖尿病の治療を続けていると、「最近、治療費が高くなった気がする…」「前の病院ではもっと安かったのに…」と感じることはありませんか? 

例えば、以前の病院では「在宅自己注射管理料」と「生活習慣病管理料」の両方が請求されていたのに、今の病院では「在宅自己注射管理料」しか請求されていないという方もいらっしゃるかもしれません。
インスリン治療をしている方にとって費用の負担は大きいため、不安に感じる方もいるかもしれません。

糖尿病でインスリン療法を行っている方に関係する診療点数の、「在宅自己注射管理料」と「生活習慣病管理料」について、分かりやすく解説します。
これらの費用がどのように算定されるのか、併用は可能なのか、一緒に疑問を解消していきましょう。

在宅自己注射管理料とは

今回は糖尿病の治療における在宅自己管理料の算定について紹介します。

糖尿病の患者さんの中には、インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬などを自己注射しながら血糖値をコントロールしている人がいます。

「在宅自己注射管理料」は、そうしたインスリンやGLP-1受容体作動薬などを自分で注射する方に対して、安全に注射を行うための様々な指導や管理をするために算定されます。

管理料に含まれる内容

医療機関では、患者さんが安全に自己注射を行えるように管理や指導を行います。

・インスリン注射やGLP-1受容体作動薬注射などの注射方法の指導

・注射に伴う副作用や低血糖への対応方法

・注射針や注射器の適切な保管方法などの指導など

患者さんの病状や生活状況に合わせた指導に加え、注射部位の確認、注射後の経過観察、副作用の有無の確認なども含まれます。

算定の条件

入院中ではない、インスリンやGLP-1受容体作動薬などを自分で注射している患者さんに対して、自己注射に関する指導管理を行った場合に月に1回に限り算定します。

1 間歇注入シリンジポンプ 1,230点
(情報通信機器を用いた場合(オンライン診療):1070点)
2 1以外の場合 月27回以下 650点(情報通信機器を用いた場合(オンライン診療):566点) 
月28回以上 750点
(情報通信機器を用いた場合(オンライン診療):653点)

*情報通信機器を用いた診療とは、テレビ電話などの情報通信機器を用いたオンライン診療や遠隔診療を指します。

生活習慣病管理料とは

生活習慣病管理料とは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症を主病とする患者さんが対象です。
検査や指導といった内容が含まれており、患者さんがより健康的な生活を送れるようにサポートすることを目的としています。

2024年6月の診療報酬改定で、検査などを包括する生活習慣病管理料(I)と包括しない生活習慣病管理料(II)の2種類になりました。
2024年6月までは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症を主病とする方には特定疾患療養管理料という項目で算定されていました。

生活習慣病管理料(I)
主病によって点数が異なる
610~760点
生活習慣病管理料(II)333点
(情報通信機器を用いた場合(オンライン診療):290点)

次に在宅自己注射管理料と生活習慣病管理料が同時に算定できるか、一緒に確認しましょう。

管理料算定のルール

糖尿病が主病で在宅自己注射指導管理料を算定している場合は、生活習慣病管理料は算定できません。
併用が可能となる条件は、在宅自己注射をしている方が糖尿病を主病としていない場合です。つまり、高血圧症や脂質異常症を主病として生活習慣病管理料を算定することで、在宅自己注射指導管理料も算定することが可能になります。

具体的なケースで確認してみましょう。

▶Aさんの場合
Aさんは長年、糖尿病の治療では薬の服用やインスリン注射を行います。また高血圧も患っており血圧を下げる薬も飲んでいます。

糖尿病が主病の場合
在宅自己注射管理料のみ算定でき、生活習慣病管理料は一緒に算定できません。糖尿病という主病に対して算定できる管理料は一つまでとなるからです。

高血圧が主病の場合
高血圧の主病に対して生活習慣病管理料を算定し、糖尿病に対して在宅自己注射管理料を算定することができます。

主病インスリン自己注射在宅自己注射管理料生活習慣病管理料
糖尿病あり
高血圧症
脂質異常症
あり

このように、在宅自己注射管理料と生活習慣病管理料の併用は、主病が何かによって判断が分かれます。
ご自身の症状など医療機関ごとに対応が異なりますので、ご自身の状況がどうなのか気になる場合は、かかりつけの医療機関へご確認ください。

ヤックルはどのように算定している?

ヤックルでは、基本的には在宅自己注射管理料と生活習慣病管理料の併用をしていません。

主病インスリン自己注射在宅自己注射管理料生活習慣病管理料
糖尿病あり
高血圧症
糖尿病
脂質異常症
なし

「主病」とは、複数の病気の中で最も治療を要する主要な病気です。ヤックルでは高血圧症や脂質異常症より、自己注射が必要な糖尿病の方がより管理が必要な主病と考えています。

ただし、これはあくまでも当院の方針であり、他の医療機関では異なる判断基準で併用を認めている場合もあります。正しい条件を満たせば、在宅自己注射管理料と生活習慣病管理料の併用は可能です。他の医療機関で併用して算定されている場合と、算定されていない場合があるのは、それぞれの医療機関の考え方や判断が異なるためです。それぞれの医療機関の治療方針や患者さん個々の症状によって、適切な算定方法は異なってきます。

費用について疑問がある場合は、ご自身の状況を詳しく説明し、かかりつけの医療機関にご相談ください。

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