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高血圧は「国民病」とも言われるほど、多くの人々が罹患している病気です。日本人の約3人に1人が高血圧と言われており、ご家族やご親族に高血圧の方がいる場合、「遺伝するのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。特に、高齢になるにつれて高血圧の割合は高くなり、75歳以上では約70%もの人が高血圧と言われています。しかし、40~70歳代でも男性は約60%、女性は約40%が高血圧であることから、決して高齢者だけの病気ではありません。
加齢は高血圧の要因の一つですが、中年層における高血圧には遺伝がどのように関わっているのでしょうか?本記事では、高血圧と遺伝の関係について、メカニズムから具体的な対策まで、詳しく解説していきます。
高血圧とは?病気の基本情報

高血圧とは、血圧が基準値よりも高い状態が続くことを指し、持続的な高血圧状態は「高血圧症」と診断されます。初期段階では自覚症状がないことがほとんどですが、進行すると頭痛・めまい・肩こり・視界のちらつきなどの症状が現れることがあります。
血圧は「上の血圧(収縮期血圧)」と「下の血圧(拡張期血圧)」で表されます。高血圧の基準値は、医療機関で測定する診察室血圧では140/90mmHg以上、家庭で測定する家庭血圧では135/85mmHg以上です。高血圧症と診断されるには、1回の測定だけでなく、診察室血圧の場合は別日での測定でも基準値以上、家庭血圧の場合は5〜7日間以上の測定の平均値が基準値以上であることが条件となります。
高血圧と遺伝の関係

家族に高血圧の人がいると、「自分も遺伝するのでは?」と不安に感じるのは当然です。実際、高血圧になりやすい体質は遺伝すると考えられています。両親や兄弟姉妹に高血圧の人がいる場合、そうでない人と比べて高血圧になるリスクが高まります。
しかし、重要なのは「高血圧そのものが遺伝する」のではなく、「高血圧になりやすい体質が遺伝する」ということです。つまり、遺伝的な要因に加えて、食生活や生活習慣といった環境要因が重なることで、高血圧を発症する可能性が高まるのです。
高血圧は必ずしも遺伝する病気ではない
高血圧は遺伝的要因が関与するものの、必ずしも遺伝する病気ではありません。家族や親族に高血圧の人が多くても、健康的な生活習慣を送ることで高血圧の発症を防ぐことができる場合もあります。
また、高血圧の原因は遺伝や生活習慣だけでなく、「二次性高血圧」と呼ばれる、他の病気が原因で引き起こされる高血圧もあります。例えば、睡眠時無呼吸症候群や原発性アルドステロン症などが原因となることがあります。これらの病気を治療することで、高血圧も改善される可能性があります。
遺伝的な要因に加えて、育った環境や生活習慣も高血圧の発症に大きく影響します。つまり、遺伝的体質を持っていても、生活習慣を改善することで高血圧の発症リスクを大きく下げることができるのです。
家族歴がある場合の高血圧リスク
高血圧は、家族に同じ症状を持つ人がいる場合、そのリスクが高まる可能性があります。特に、両親や兄弟に高血圧の人がいる場合、遺伝的な要因が大きく関与しているとされています。
しかし、家族歴があるからといって必ず高血圧になるわけではありません。遺伝的な要因に加え、塩分摂取量や運動習慣などの生活習慣がリスクに大きく影響するため、自分の生活をコントロールすることでリスクを軽減できる可能性があります。
高血圧と性別・年齢との関連性
高血圧のリスクは、年齢や性別によっても異なります。一般的に、高血圧は加齢とともに発症リスクが高まる病気です。若い年齢層では男性に多く見られますが、女性の場合は閉経後に発症リスクが急激に高まる傾向があります。これはホルモンバランスの変化が影響していると考えられています。
こうしたリスク要因を知ることで、健康診断や日常生活での注意点を意識しやすくなるでしょう。
高血圧が遺伝するメカニズム

高血圧の遺伝には、複数の遺伝子が関与していると考えられています。ここでは、高血圧の遺伝メカニズムと、遺伝要因と環境要因の相互作用について解説します。
遺伝子が血圧調節にどう関わるか
血圧の調節には、腎臓で作られる酵素であるレニンや、その作用によって生成されるアンジオテンシンなどが重要な役割を果たしています。これらの物質の生成や働きに関わる遺伝子に変異があると、血圧が上昇しやすくなる可能性があります。
とくに、レニン遺伝子は血圧制御に重要な役割を担っており、血圧の変動を感知し血圧を安定させる働きを持っていますが、その詳しいメカニズムはまだ解明されていない部分もあります。
親が高血圧だと自分も必ず高血圧になるのか?

高血圧が遺伝する確率は、家族構成によって異なります。両親とも高血圧の場合は子供への遺伝確率は約50%、片親のみが高血圧の場合は約30%程度と言われています。しかし、これはあくまで確率的なものであり、必ずしも遺伝するわけではありません。
高血圧の発症には、遺伝的要因だけでなく、生活習慣などの環境要因も大きく影響します。そのため、遺伝的な体質を持っていても、生活習慣を改善することで発症リスクを抑えることができます。
環境要因と遺伝要因
近年注目されているのが、エピジェネティクスという分野です。これは、遺伝子の塩基配列の変化を伴わない、遺伝子発現の変化を研究する分野です。例えば、同じ遺伝子を持っていても、生活習慣や環境によって遺伝子の働き方が変わり、病気の発症リスクに影響を与えることが分かってきています。
つまり、遺伝的な体質を持っていても、生活習慣を改善することで遺伝子の発現を制御し、高血圧の発症を抑えることができる可能性があるのです。
高血圧になりやすい遺伝的体質

高血圧になりやすい体質には、以下のような遺伝子が関与していると考えられています。
塩分感受性遺伝子
塩分感受性とは、塩分の摂取量によって血圧が変動しやすい体質のことです。特定の遺伝子に変異があると、塩分を過剰に摂取した場合に血圧が上昇しやすくなることが分かっています。日本人は塩分摂取量が多い傾向にあるため、塩分感受性の高い人は特に注意が必要です。
その他の関連遺伝子
血圧の調節には、レニン-アンジオテンシン系以外にも、さまざまな生理活性物質や臓器が関与しており、それらに関連する遺伝子も高血圧の発症に影響を与えていると考えられています。
遺伝子検査でわかること・わからないこと
近年、遺伝子検査によって高血圧のリスクをある程度予測することができるようになりました。しかし、現時点では、遺伝子検査で高血圧の発症を完全に予測することはできません。なぜなら、高血圧の発症には遺伝的要因だけでなく、生活習慣などの環境要因も大きく関与するからです。
遺伝子検査はあくまでリスク評価の一つの手段として捉え、生活習慣の改善と合わせて活用することが重要です。
高血圧には生活習慣も大きく関与する

高血圧には遺伝的要因だけでなく、生活習慣も大きく関与します。以下の生活習慣は高血圧のリスクを高めます。

- 塩分の過剰摂取
- アルコールの過剰摂取
- 運動不足
- 肥満
- 睡眠不足
- ストレス
特に、日本人は塩分摂取量が多い傾向にあるため、食生活の見直しは高血圧予防において非常に重要です。
高血圧の対策は生活習慣の見直しが基本

高血圧の対策として、遺伝的要因を変えることはできませんが、生活習慣を見直すことで発症リスクを大きく下げることができます。
塩分を摂りすぎない
高血圧治療ガイドラインでは、1日の塩分摂取量の目安は6g未満とされています。減塩醤油の使用・香辛料や酸味の活用・汁物を控えるなど、日常的に減塩を意識した食生活を心がけていきましょう。
推奨している食材 | 働き |
野菜・果物・ナッツ・海藻類・大豆製品・プレーンヨーグルト | 塩分(ナトリウム)を排泄する働きを持つミネラル(カリウム・カルシウム・マグネシウム)を含んでいるので、摂取した塩分を体外に出される |
イカ・タコ・牡蠣・あさり・しじみ | 腎臓の働きを促進させるタウリンが含まれているので、血圧を正常に保てる |
緑茶・コーヒー | カテキン・GABAによって血圧が下がる |
そば | 血管を丈夫にするルチン(ポリフェノール)が含まれているので、血圧と血糖を下げられる |
有酸素運動を習慣に
適度な運動は、血管の柔軟性を保ち血圧を下げる効果があります。ウォーキングなどの有酸素運動を1日30〜50分程度、週5日以上行うことが推奨されます。
ストレスを溜めずに解消する
ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、血圧上昇につながることがあります。十分な睡眠・趣味やリラックスできる時間を持つなど、自分に合った方法でストレスを解消しましょう。
禁煙する
喫煙は動脈硬化を進行させ、血圧上昇のリスクを高めます。禁煙は高血圧予防だけでなく、健康全般にとって非常に重要です。
高血圧の遺伝に不安を持ったら医師へ相談を

高血圧には遺伝的要因と生活習慣の両方が関与します。家族に高血圧の人がいる場合は、遺伝的な体質を受け継いでいる可能性がありますが、生活習慣を見直すことで発症リスクを抑えることができます。「もしかして高血圧かも?」と感じたら、早めに医師に相談しましょう。
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