糖尿病は「治る」のか?専門医が解説する「寛解」を目指す方法

2025年06月12日

「糖尿病は一生治らないの?」「薬は飲み続けなければならないの?」

糖尿病と診断されたとき、多くの方が「これから一生付き合う病気なのか」と不安になります。確かに、一度糖尿病になると、完全に元の体質に戻る「完治」は難しいケースが多いのが現状です。

しかし、適切な治療と生活習慣の改善によって、血糖値を良好にコントロールし、健康な人と変わらない日常生活を送ることは十分に可能です。

この記事では、「糖尿病は治るのか?」という疑問に対して、完治と寛解という考え方、寛解を目指すための治療や生活の工夫について、専門医の視点でわかりやすく解説します。

「今からでもできることがある」と思えるヒントを、ぜひ見つけてください。

糖尿病は「治る」病気?─完治・寛解・改善の違い

糖尿病が「完治しない」と言われる理由

糖尿病は「完治が難しい病気」とされています。その理由は、糖尿病の種類によって異なります。

1型糖尿病の場合

1型糖尿病は、すい臓のβ細胞が自己免疫反応により破壊され、インスリンが分泌できなくなる病気です。現代の医学では、破壊されたβ細胞を元通りに再生することはできないため、完治は難しいとされています。

2型糖尿病の場合

2型糖尿病は、遺伝的な体質や生活習慣が原因で、インスリンの効きが悪くなったり分泌が不足したりする病気です。治療により血糖値を改善できても、加齢や体質といった根本要因は残るため、完治は困難と考えられています。

ただし、適切な治療と管理を行うことで、日常生活に支障がない状態を保つことは十分に可能です。

「完治」「寛解」「改善」の違いとは?

糖尿病の治療目標には「完治」「寛解」「改善」などの言葉が使われますが、それぞれ意味が異なります。

状態定義薬の必要性再発リスク
完治病気そのものが完全に消失した状態不要ほぼなし
寛解症状・検査値が正常化し、薬なしで血糖がコントロールされている状態不要あり
改善症状が軽くなり、血糖値が安定している状態状況により必要あり

「寛解」は完治ではありませんが、健康な人と変わらない生活を送れる状態です。

寛解が期待できるケースとその効果

寛解は、特に発症から間もない2型糖尿病で、生活習慣の改善によってインスリンの働きが回復する場合に見られます。

期待できる効果としては、

などが挙げられます。

どんな人が寛解しやすい?共通する5つの特徴

近年の研究により、以下のような特徴を持つ方が寛解を達成しやすいことが分かっています。

特徴寛解の可能性
診断からの期間が短い高い
体重減少(特に5%以上)高い
初期のHbA1cが比較的低い高い
肥満傾向(BMIが高い)高い
薬物療法を行っていない高い

これらの特徴に当てはまる方は、積極的に寛解を目指した治療に取り組むことが推奨されます。

「寛解」を目指すための治療と生活習慣のポイント

糖尿病で寛解を目指すには、生活習慣の見直しと、医師・栄養士など専門家のサポートを受けながら継続的に取り組むことが欠かせません。

ここでは、実際に寛解を達成した方々が実践している、代表的な取り組みをご紹介します。

(1) 食事療法:血糖値と体重のコントロールが鍵

過食や偏った食事を避け、栄養バランスを整えることが基本です。特に糖質の摂取を管理することで、膵臓の負担を軽減し、血糖値の安定化や体重減少に繋がります。

次のような工夫を取り入れることで、血糖値の安定と体重のコントロールに繋がります。

医師や管理栄養士に相談しながら進めると、無理なく継続しやすくなります。

(2) 運動療法:インスリンの効きを高める習慣づくり

運動は、血糖値のコントロールに加え、インスリン抵抗性の改善・体重減少・筋力維持にも効果的です。

生活に取り入れやすい運動の例

ただし、病状によっては運動が制限されることもあるため、事前に医師に相談しましょう。

(3) 薬物療法:血糖値を安定させ、寛解に近づけるために

薬物療法は、血糖値を適切にコントロールし、すい臓の働きを守りながら、合併症を予防する重要な治療法です。特に発症初期では、薬を使うことで血糖値を早期に安定させ、すい臓の負担を軽減するという目的があります。

将来的に「薬に頼らない生活」を目標として、一時的に薬の力を借りることも、寛解へのプロセスのひとつです。

主なポイント

自己判断で薬を減らしたり中止したりするのは危険です。医師と相談しながら段階的に見直していくことが大切です。

再発を防ぐには?「寛解」を維持するために続けたい生活習慣

糖尿病の「寛解」は、血糖値が正常範囲で安定している望ましい状態ですが、それはゴールではなく「新たなスタート」とも言えますが、せっかく血糖値が落ち着いても「もう治った」と油断していると少なからず再発される方もいます。

この状態を長く維持するためには、日々の体調管理と継続的な習慣が重要です。

(1) 体重管理の継続|リバウンドを防ぐ日々の工夫

寛解後も体重管理を怠ると、血糖値が再び悪化するリスクが高まります。特に、体重のリバウンドは再発のきっかけになりやすいため注意が必要です。

実践ポイント

(2) 定期検診と血糖値モニタリング|「今の状態」を見える化

寛解していても、血糖値やHbA1cの変化は目に見えにくいため、定期的な検査での「見える化」が欠かせません。医師と連携しながら、自分の状態を定期的に確認しましょう。

実践ポイント

(3) 合併症予防|「見えないリスク」と向き合う

血糖コントロールが良好でも、過去の高血糖による影響は体に蓄積されている可能性があります。

特に神経障害、腎症、網膜症といった合併症は、症状に気づきにくいため、早期の対策が重要です。

実践ポイント

糖尿病治療の未来と新しい選択肢

糖尿病治療は年々進歩しており、以前に比べてより効果的で、生活と両立しやすい治療法が増えてきています。

現在では、食事療法や運動療法に加えて、インスリン分泌を助けたり、糖の吸収や排出を調整する複数の薬剤が登場し、患者さん一人ひとりに合わせた治療が可能になっています。

その結果、血糖値を良好に保ち、健康な人とほぼ変わらない日常生活を送る方も増えています。

治療法は年々進歩していきますが、生活習慣の改善が根本的に将来の自分の身体を守ることになります。今できる事は生活習慣改善がベースとなります。

「糖尿病と共に生きる」から「気にならない時代へ」

将来の展望としては、以下のような研究が進められています。

肥満や脂肪肝があっても、糖尿病にならない体質のメカニズムを遺伝子レベルで解明し、「太っていても糖尿病にならない」「合併症が起こらない」治療アプローチの開発が目指されています。

医学の進歩により、糖尿病によって寿命が縮むことのない時代を目指す研究が進んでいます。

こうした進展により、将来的には「糖尿病=怖い病気」というイメージが薄れ、偏見(スティグマ)のない社会に近づくことも期待されています。

医師とつながる新しい治療スタイル

糖尿病の治療は、「診断されたら終わり」ではなく、日々の不安や変化に寄り添う継続的なケアが必要です。そのためには、医師との連携・相談のしやすさが重要なポイントになります。

最近では、以下のような新しい方法が登場しています。

このような仕組みを活用すれば、「続けること」がより現実的に、そして身近になります。

糖尿病についてのよくある質問

Q1.インスリン注射は一度始めると、一生続けなくてはなりませんか?

A1.いいえ、必ずしもそうとは限りません。インスリン注射は、高血糖で疲れた膵臓を一時的に“休ませる”役割を担うことがあります。その結果、インスリンを分泌する機能が回復し、治療の経過によっては注射をやめたり、内服薬に切り替えたりできる可能性もあります。

インスリンは、もともと体内で作られている大切なホルモンであり、安全性の高い治療法です。恐れずに、医師と相談しながら治療を続けることが大切です。

Q2.薬を使わずに、食事と運動だけで寛解を目指せますか?

Q2.発症早期の糖尿病であれば、食事療法と運動療法だけで血糖コントロールが改善し、薬を使わない状態(寛解)を目指すことは可能です。

ただし、これは一過性の改善ではなく、生活習慣の継続的な変化が必要です。成功した方の多くは、以下のような大きな生活変化を取り入れています。

一方で、生活習慣にほとんど変化がない場合は、薬を使わずに血糖値を安定させることは難しいのが現実です。ご自身の生活に無理なく取り入れられる方法を、医師や栄養士と一緒に見つけていくことが、成功の鍵です。

Q3.治療を始めてから、どのくらいで寛解できますか?

A3.糖尿病の寛解にかかる期間は、個人の状態や治療内容、生活習慣の改善度合いによって大きく異なります。

例えば、

などは、比較的短期間で寛解に近づく傾向があると報告されています。

ただし、「○ヶ月で必ず寛解できる」といった明確な期間はありません。寛解を目指すには、継続的な取り組みと、自分に合った習慣の定着が不可欠です。

まとめ:糖尿病とうまく付き合っていくために

糖尿病は「一生治らない」と思われがちですが、適切な治療と生活改善によって、寛解を目指せる可能性があります。たとえ寛解に至らなくても、血糖値を安定させ、合併症を防ぐことで、健康な生活を送ることは十分に可能です。

そのためには、食事や運動の継続に加え、体重管理や定期的な検査を怠らないことが大切です。寛解後も再発を防ぐには、日々の習慣を無理なく続けることが求められます。

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不安を感じたときこそ、まずは専門家に相談してみてください。小さな一歩が、将来の安心につながります。

 

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ヤックルの医師紹介

監修医師

楢橋 和真

楢橋 和真

経歴
2011年3月
獨協医科大学医学部医学科卒業
2011年4月
千葉県がんセンター 初期研修
資格

一般社団法人日本救急医学会 救急科専門医

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