血圧を下げる薬
高血圧は、自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞などの重篤な病気を引き起こすリスクを高める生活習慣病です。近年、高血圧患者の数は増加しており、適切な治療が重要となっています。
高血圧治療の第一歩は、生活習慣の改善です。しかし、生活習慣の改善だけでは血圧を十分にコントロールできない場合もあります。そのような場合には、高血圧治療薬の服用が必要です。
高血圧治療薬には様々な種類があり、それぞれ作用機序や効果、副作用などが異なります。
高血圧治療薬の種類
高血圧治療薬は、大きく分けて以下の6種類に分類されます。
- ACE阻害薬:アンジオテンシンIIという血管を収縮させるホルモンの生成を抑制することで、血圧を下げます。
- ARB:アンジオテンシンII受容体に作用し、血管を収縮させる効果を抑制することで、血圧を下げます。
- カルシウム拮抗薬:血管の壁にあるカルシウムチャネルをブロックすることで、血管を拡張し、血圧を下げます。
- β遮断薬:心拍数や心拍出量を抑制することで、血圧を下げます。
- 利尿薬:尿量を増やすことで、体内の塩分と水分を排出し、血圧を下げます。
- α遮断薬:血管や内臓のα受容体に作用し、血管や内臓の収縮を抑制することで、血圧を下げます。
カルシウム拮抗薬
血管の壁にあるカルシウムチャネルをブロックすることで、血管を拡張し、血圧を下げます。カルシウムは、血管の収縮や弛緩に関わる重要なイオンです。カルシウム拮抗薬は、カルシウムチャネルをブロックすることで、血管に入るカルシウムイオンの量を減らし、血管を拡張します。
アムロジピン
1980年代から使用されており、長年の実績と安全性、高い効果から、世界中で広く処方されています。アムロジピンの主な作用は、血管の壁にあるカルシウムチャネルをブロックして、血管を拡張することです。作用は24時間持続します。またグレープフルーツジュースと一緒に服用すると、薬の血中濃度が上昇することがあるので、避けてください。
ACE阻害薬
アンジオテンシンIIという血管を収縮させるホルモンの生成を抑制することで、血圧を下げます。アンジオテンシンIIは、レニンという酵素によってアンジオテンシンIから生成されます。ACE阻害薬の作用は、レニンの働きを阻害し、アンジオテンシンIIの生成を抑制することです。
エナラプリルマレイン酸塩錠
エナラプリルマレイン酸塩錠の主な作用は、アンジオテンシンⅡという血管を収縮させるホルモンの生成を抑制して、血圧を下げることです。また血管を拡張し、心臓への負荷を軽減して、心筋肥大を抑制することが示されています。
ARB
アンジオテンシンII受容体に作用し、血管を収縮させる効果を抑制することで、血圧を下げます。アンジオテンシンII受容体は、血管や心臓、腎臓などに存在し、アンジオテンシンIIと結合することで血管を収縮させたり、ナトリウムや水分の再吸収を促進したりします。ARBの作用は、アンジオテンシンII受容体に結合するのを阻害し、これらの作用を抑制することです。
オルメサルタン
オルメサルタン錠の主な作用は、アンジオテンシンⅡという血管を収縮させるホルモンが受容体に結合するのを阻害することで、血圧を下げることです。またACE阻害薬と同じように、腎臓の血管を保護し、腎機能の悪化を抑制することが示されています。
β遮断薬
心拍数や心拍出量を抑制することで、血圧を下げます。β遮断薬は、β受容体に作用し、アドレナリンやノルアドレナリンなどのβ受容体刺激を抑制します。アドレナリンやノルアドレナリンの作用は、心拍数や心拍出量を増加させ、血圧を上昇させることです。
ビソプロロールフマル塩酸錠
ビソプロロールフマル酸塩錠の主な作用は、β受容体に作用し、アドレナリンやノルアドレナリンなどのβ受容体刺激を抑制することで、心臓の働きを抑制し、血圧を下げることです。また心臓の負担を軽減することで、心不全の進行を抑制することが示されています。
利尿薬
尿量を増やすことで、体内の塩分と水分を排出し、血圧を下げます。利尿薬は、腎臓の尿細管にあるNa+/K+/2Cl-共輸送体やNa+/Cl-共輸送体などのイオンチャネルをブロックすることで、尿量を増やします。
トリクロルメチアジド錠
トリクロルメチアシド錠の利尿作用は、比較的穏やかで持続時間が長いという特徴があります。そのため、むくみや高血圧の長期的な治療に適しているのです。利尿作用は、服用後1~2時間で効果が現れ、6~8時間持続します。そのため、脱水に注意を払うことが重要です。
α遮断薬
血管や内臓のα受容体に作用し、血管や内臓の収縮を抑制することで、血圧を下げます。α受容体は、血管や内臓、膀胱などに存在し、ノルアドレナリンなどと結合することで、血管や内臓を収縮させたり、膀胱の排尿を抑制したりします。α遮断薬の作用は、α受容体に結合してこれらを抑制することです。
ドキサゾシン錠
ドキサゾシン錠は、高血圧・前立腺肥大症治療薬として長年の実績と安全性、高い効果を有する薬剤です。服用方法は簡単で、副作用も比較的少ないため、多くの人に処方されています。
まとめ
高血圧治療薬には様々な種類があり、それぞれ作用機序や効果、副作用などが異なります。高血圧治療薬を選ぶ際には、患者の年齢、性別、体格、併存疾患、副作用、生活習慣などを考慮する必要があります。高血圧治療は、生活習慣の改善と薬物療法の両方が重要です。高血圧でお悩みの方は、ぜひ医療機関を受診し、ご相談ください。