
健康診断や家庭での血圧測定で、下の血圧が60台だった、あるいはそれ以下の数値を示したとき、「なぜこんなに低いのだろう」「何か体に悪い症状が出るのでは?」と不安に感じるかもしれません。
上の血圧は正常なのに、なぜ下だけが低いのか、その原因と具体的な対処法を知りたいと思う方も多いはずです。
この記事では、下の血圧が低い状態について、その原因や考えられる症状、日常生活でできる改善策までを解説します。
下の血圧(拡張期血圧)の基礎知識|正常値と低い場合の基準
下の血圧は「拡張期血圧」とも呼ばれ、心臓が拡張して全身から血液を吸い込むときに血管にかかる圧力の値を示します。
この数値は、主に末梢血管の抵抗の大きさを反映しており、血管のしなやかさを見る指標の一つです。
日本高血圧学会が定める血圧の正常値は、診察室血圧で上が120mmHg未満かつ下が80mmHg未満、家庭血圧で上が115mmHg未満かつ下が75mmHg未満とされています。
一方で、低血圧には明確な基準値がありませんが、一般的に下の血圧が60mmHg未満の場合を一つの目安とします。
下の血圧は何を示している?心臓と血管の健康状態がわかる
下の血圧(拡張期血圧)は、心臓が血液を取り込むために最も大きく広がった(拡張した)瞬間に、動脈の壁にかかる圧力を指します。
この数値は、主に手足など体の末端にある細い血管(末梢血管)のしなやかさや抵抗の状態を反映しています。
下の血圧が適正な範囲にあれば、血管が弾力性を保っていることを示します。
逆に、この数値が低すぎる、あるいは高すぎる場合は、心臓や血管に何らかの変化が起きている可能性を考えるきっかけとなります。
【年代別】下の血圧の正常値と平均値一覧
下の血圧の平均値は年代によって少しずつ変動します。
厚生労働省の調査によると、20代から40代の比較的若い世代では、男女ともに下の血圧の平均は70mmHg台で推移することが多いです。
例えば30代、40代の男性では約78mmHg、女性では約74mmHgが平均値となっています。
50代、60代と年代が上がるにつれて、特に高齢者では動脈硬化の影響で下の血圧が少し下がる傾向が見られることもあります。
ただし、個人差が大きいため、平均値はあくまで参考として捉えることが重要です。
下の血圧が60mmHg未満は「低血圧」の一つの目安
世界保健機関(WHO)の基準では、上の血圧が100mmHg未満、または下の血圧が60mmHg未満の状態を「低血圧」としています。
そのため、下の血圧が60mmHgを下回る場合は、低血圧に該当する可能性があります。
しかし、この数値はあくまで一つの目安です。
血圧が低すぎること自体が問題なのではなく、めまいや立ちくらみ、倦怠感といった症状を伴うかどうかが重要になります。
症状がなく元気に過ごせている場合は、過度に心配する必要はないとされています。
上の血圧は正常なのに下だけ低いのはなぜ?
上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)の差を「脈圧」と呼びます。
上の血圧は正常値の範囲内であるのに、下の血圧だけが低い場合、この脈圧が大きくなっている状態です。
脈圧が大きくなる主な原因として、加齢による動脈硬化の進行が考えられます。
心臓から近い太い動脈が硬くなることで、心臓が収縮したときの上の血圧は高くなりやすく、逆に心臓が拡張したときの下の血圧は低くなりやすくなるため、上下の差が開く傾向にあります。
下の血圧が低くなる4つの主な原因
下の血圧が低くなった、あるいはもともと低い背景には、いくつかの原因が考えられます。
主なものとして、加齢による血管の変化、自律神経の働き、遺伝的な体質、そして服用している薬の影響などが挙げられます。
これらの原因は単独で影響することもあれば、複数が組み合わさって下の血圧を低くしている場合もあります。
自身の生活習慣や体調と照らし合わせながら、どの要因が当てはまるか考えてみましょう。
【原因1】加齢にともなう動脈硬化で血管の弾力性が失われる
年齢を重ねると、血管は徐々に弾力性を失い硬くなります。
これは動脈硬化と呼ばれる現象です。
特に心臓に近い大動脈が硬くなると、心臓が血液を送り出す力にうまく対応できず、血圧の上下差が大きくなる傾向があります。
その結果、心臓が拡張するときに血管にかかる圧力、つまり下の血圧が低下することがあります。
高齢者で上は高いのに下は低いという状態が見られるのは、この動脈硬化が主な原因の一つです。
【原因2】自律神経の乱れで血圧の調整がうまくいかない
自律神経は、心臓の動きや血管の収縮・拡張をコントロールし、血圧を常に適切な範囲に保つ役割を担っています。
しかし、過度なストレスや睡眠不足、不規則な生活が続くと、この自律神経のバランスが乱れてしまいます。
その結果、血圧の調整機能がうまく働かなくなり、血管が適切に収縮できずに拡張したままの状態になることがあります。
これが、血圧、特に下の血圧が低くなる原因となる場合があります。
【原因3】遺伝的な体質や痩せ型の体系
病気などの明確な原因がないにもかかわらず、体質的に血圧が低い状態を「本態性低血圧」と呼びます。
これは遺伝的な要因が大きいと考えられており、家族に血圧が低い人がいる場合、自身も低血圧になりやすい傾向があります。
特に、痩せ型で筋肉量が少ない若い女性に多く見られます。
心臓から血液を送り出す力がもともと弱かったり、血液を溜めておく血管の容量が大きかったりすることが、体質的な低血圧の背景にあると考えられています。
【原因4】服用中の薬(降圧剤など)が影響している
高血圧の治療のために降圧剤を服用している場合、薬の効果が強く出過ぎて血圧が下がりすぎることがあります。
特に、下の血圧だけが目標値よりも低くなってしまうケースも少なくありません。
また、降圧剤以外にも、精神疾患の治療薬や前立腺肥大症の薬など、一部の薬の副作用として血圧が下がることが知られています。
薬を服用し始めてから血圧が低くなったと感じる場合は、自己判断で中断せず、処方した医師や薬剤師に相談することが重要です。
下の血圧が低い時に現れる具体的な症状
下の血圧が低い、つまり低血圧の状態の時には、全身の血の巡りが悪くなることで様々な症状が現れることがあります。
これらの症状は、脳や体の各組織に必要な酸素や栄養素が十分に行き渡りにくくなるために起こります。
ただし、血圧が低い方すべてに症状が出るわけではなく、体質によっては無症状で元気に過ごせる場合もあります。
どのような症状が出やすいかを知っておくことが、自身の体調を理解する上で役立ちます。
急に立ち上がるときの「めまい」や「立ちくらみ」
急に立ち上がった瞬間に、目の前が暗くなったり、ふらっとしたりする立ちくらみは、低血圧の代表的な症状です。
これは起立性低血圧と呼ばれ、起き上がる際に重力で血液が下半身に集まり、脳への血流が一時的に減少することで起こります。
血圧が低い方は、この血圧の変動を調整する機能がうまく働かず、めまいや立ちくらみを感じやすくなります。
症状が強い場合は、転倒のリスクもあるため注意が必要です。
朝なかなか起きられない、日中に強い眠気を感じる
血圧は睡眠中に低下し、朝の起床に向けて徐々に上昇して体を活動モードに切り替えます。
しかし、血圧が低い方はこの切り替えがスムーズにいかず、朝すっきりと起きられない、午前中に頭がぼーっとするといった症状が出やすくなります。
また、日中も脳への血流が十分でないために、強い眠気や集中力の低下を感じることがあります。
これらの症状は、単なる寝不足や疲れと間違われやすい点にも注意が必要です。
全身の倦怠感や疲労感が抜けにくい
血圧が低いと、心臓が血液を全身に送り出す力が弱まるため、血行が悪くなりがちです。
その結果、体のすみずみの細胞まで酸素や栄養素が十分に行き渡らず、エネルギー不足の状態に陥りやすくなります。
これが原因で、特に理由がないのに体がだるい、少し動いただけですぐに疲れる、休息をとっても疲労感が抜けないといった全身の倦怠感につながることがあります。
常に疲れを感じている場合は、低血圧が影響している可能性も考えられます。
頭痛や肩こりが慢性的に続く
低血圧による血行不良は、頭痛や肩こりの原因にもなります。
特に首や肩周りの血流が悪くなると、筋肉が緊張して硬くなり、それがこりや痛みとして感じられます。
また、脳への血流が不安定になることで、頭が重く感じられたり、ズキズキとした痛みが生じたりすることもあります。
マッサージなどで一時的に楽になっても、すぐに症状がぶり返す場合は、根本的な原因として低血圧が関係しているかもしれません。
放置は危険?下の血圧が低い場合に考えられる病気
下の血圧が低い状態が続くと、単なる体質ではなく、何らかの病気が隠れている可能性も考慮する必要があります。
例えば、心臓のポンプ機能が低下する心不全や、脈が乱れる不整脈といった心臓の病気では、全身にうまく血液を送れなくなり血圧が低下します。
また、赤血球が不足する貧血や、ホルモンの異常(甲状腺機能低下症やアジソン病)、重度の糖尿病なども低血圧の原因となり得ます。
めまいや倦怠感などの症状が強い場合は、これらの病気の可能性も視野に入れて医療機関を受診することが大切です。
日常生活でできる!下の血圧が低い状態を改善する4つの対処法
下の血圧が低く、めまいや倦怠感などの症状に悩んでいる場合、日常生活の工夫によって症状が和らぐことがあります。
血圧は食事や運動、生活リズムなど様々な要因で変動するため、セルフケアによる改善が期待できます。
ここでは、今日から始められる具体的な対策や改善方法を4つ紹介します。
ただし、これらの対処法は症状の緩和を目的とするものであり、根本的な治療ではないため、つらい症状が続く場合は医療機関に相談してください。
塩分と水分を意識して適切に摂取する
塩分(ナトリウム)には、体内の血液量を増やし、血圧を上げる作用があります。
そのため、低血圧の症状改善には、適度な塩分摂取が有効な場合があります。
ただし、過剰摂取は高血圧や腎臓への負担につながるため、味噌汁や梅干しなど、食事の中で自然な形で取り入れるのがよいでしょう。
また、体内の水分が不足すると血液量が減り、血圧が下がりやすくなります。
こまめに水分補給を行い、脱水を防ぐことも重要です。
特に夏場や運動後など、汗をかきやすい場面では意識して水分と塩分を補給することが推奨されます。
血行を促進するウォーキングなどの軽い運動を習慣にする
適度な運動は、心臓のポンプ機能を高め、全身の血行を促進する効果があります。
特に、ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」とも呼ばれ、下半身に溜まった血液を心臓に戻す重要な役割を担っています。
ウォーキングやジョギング、サイクリングといった有酸素運動は、このふくらはぎの筋肉を効果的に使うため、低血圧の改善に役立ちます。
激しい運動は必要なく、無理のない範囲で毎日続けることが大切です。
運動を習慣化することで、血圧の調整機能も整いやすくなります。
タンパク質やビタミンを意識し、3食バランスの良い食事を摂る
健康な体を作り、血圧を安定させるためには、栄養バランスの取れた食事が基本です。
特に、筋肉や血液の材料となるタンパク質は、毎食しっかりと摂取しましょう。
肉や魚、卵、大豆製品などを積極的に取り入れることが推奨されます。
また、チーズやレバーなどに含まれるビタミンB群も、体のエネルギー代謝を助ける働きがあります。
食事を抜くと血糖値が下がり、めまいや倦怠感の原因にもなるため、1日3食を規則正しく食べることが大切です。
規則正しい生活を送り自律神経のバランスを整える
血圧の調整には自律神経が深く関わっているため、そのバランスを整えることが症状の改善につながります。
毎朝同じ時間に起きて太陽の光を浴びる、夜は質の良い睡眠を十分にとる、といった規則正しい生活リズムを心がけましょう。
また、ぬるめのお湯にゆっくり浸かる入浴や、リラックスできる音楽を聴くことなども、副交感神経を優位にし、心身の緊張を和らげるのに役立ちます。
日々の生活の中で、心と体を休ませる時間を意識的に作ることが、自律神経の安定と血圧の正常化に繋がります。
つらい症状が続く場合は何科?医療機関を受診する目安
セルフケアを試みても下の血圧が低い状態が改善せず、めまいや倦怠感といったつらい症状が続く場合は、医療機関の受診を検討しましょう。
症状の裏に何らかの病気が隠れている可能性もあり、専門家による診断が必要です。
自己判断で放置せず、どのタイミングで、どの診療科にかかればよいのかを知っておくことが、適切な治療への第一歩となります。
日常生活に支障が出るほどの症状があれば内科・循環器内科へ
立ちくらみで倒れそうになる、午前中はだるくて起き上がれない、頭痛がひどくて仕事や家事に集中できないなど、日常生活に支障をきたすほどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
まずはかかりつけの内科で相談するのが一般的です。
必要に応じて、心臓や血管を専門とする循環器内科を紹介されることもあります。
医師が診察し、症状の原因を特定した上で、適切な対応や治療方針を判断します。
症状がない場合でも健康診断などで定期的に数値をチェックしよう
下の血圧が低くても、特に自覚症状がない場合は、緊急で受診する必要はありません。
しかし、症状がないからといって完全に安心できるわけではなく、気づかないうちに動脈硬化が進行しているサインである可能性も考えられます。
そのため、年に一度の健康診断などを活用し、定期的に血圧の数値をチェックすることが重要です。
継続的に血圧を記録し、数値に大きな変動がないかを確認する習慣をつけましょう。
下の血圧が低いことに関するよくある質問
下の血圧が低いことについて、多くの方が抱く疑問や不安にお答えします。
ご自身の状況と照らし合わせながら、参考にしてください。
ただし、ここで紹介するのは一般的な情報であり、個別の症状については専門医への相談が最も重要です。
特に、症状が強い方や持病をお持ちの方は、かかりつけの医師に相談することをお勧めします。
まとめ
下の血圧が低い場合、その原因は加齢による動脈硬化や体質、自律神経の乱れなど多岐にわたります。
上の血圧は正常でも、脈圧が高い状態は血管の変化を示している可能性があります。
特に、めまいや倦怠感といった症状を伴う場合は注意が必要です。
生活習慣の見直しで改善することもありますが、症状がつらい、あるいは急激に血圧が下がりすぎた場合は、内科や循環器内科に相談しましょう。
また、妊娠中は血圧が変動しやすいため、かかりつけ医の指示に従うことが大切です。
