血糖値を下げる飲み薬
医療技術の進歩により、近頃では多くの糖尿病治療薬が世の中に誕生しました。糖尿病の治療薬が誕生した当初はインスリン製剤しかありませんでしたが、現在はDPP‐4阻害薬やSGLT2阻害薬、GLP‐1受容体作動薬などさまざまな種類があります。
多くの糖尿病治療薬が誕生しましたが、昔から変わらず治療の基本は食事療法と運動療法です。食事療法と運動療法を行っても十分な血糖コントロールができない場合は、薬物療法も検討されます。
ただし、薬物療法を始めたからといって食事や運動をないがしろにして良いわけではありません。薬物治療の開始後も継続して食事療法や運動療法を行うことが大切です。
なお、使用される治療薬の種類は人によって異なります。いつ血糖値が上がりやすいのか、どれくらい血糖値が高いのかなどによって適切な薬を使う必要があるのです。
DPP-4阻害薬
DPP-4阻害薬は、血液中にあるDPP-4という酵素の働きを阻害することで血糖値を下げます。DPP-4は、血糖値が上がると分泌されるインクレチンというホルモンを分解する酵素です。インクレチンはインスリンの分泌を促す働きがあるため、分解されてしまうと血糖値が十分に下がりません。DPP-4を阻害すれば、インクレチンがしっかり働くようになり、インスリンの分泌が促されて血糖値が下がりやすくなります。
ネシーナ錠
ネシーナ錠は、アログリプチンが主成分として配合された2型糖尿病の治療薬です。25mg、12.5mg、6mgの3つの規格があります。血糖値に応じてコントロールしていくため、低血糖の副作用が出にくいことが特徴です。
ビグアナイド系経口血糖降下剤
主に肝臓に働きかけて糖新生を抑制する治療薬として知られています。糖新生とは、脂肪や筋肉などを分解して血糖を作ることです。糖新生が起こると、血液中のブドウ糖が増えて血糖値が上昇してしまいます。これを抑えるのが、ビグアナイド系経口血糖降下剤です。
糖新生を抑制する働きのほか、インスリン抵抗性を改善したり筋肉や脂肪組織の糖の取り込みを促進したりする働きがあります。インスリン抵抗性とは、インスリンが効きにくくなっている状態のことです。さまざまな角度から働きかけることで血糖値を下げていきます。
メトホルミン(メトグルコ)
メトホルミンは、2型糖尿病の治療に使われるビグアナイド系経口血糖降下剤です。メトグルコという名前の薬でも知られており、医療機関では良く使われている薬の一つとして知られています。
服用を始めてすぐはお腹がゴロゴロしたり緩くなったりすることがありますが、服用を続けると体が慣れるので大きな心配はいりません。
GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬とは、私たちの体にあるGLP‐1を外から補う薬です。GLP-1には、膵臓からインスリンが分泌されるように促す働きがあります。血糖値の上昇を感知して働く薬なので、低血糖の副作用を起こしにくいことが特徴です。
これまでは自己注射タイプのGLP-1受容体作動薬しか販売されていませんでしたが、最近は血糖コントロールをよりスムーズに行えるように内服薬のタイプのものも販売されています。
リベルサス
リベルサスは、錠剤タイプのGLP-1受容体作動薬です。血糖値の上昇を感知してインスリンの分泌を促し、血糖値を下げます。リベルサスは、空腹時に服用することで効果を発揮する薬です。
服用前後に飲食をすると、有効成分が十分に吸収されません。1日の最初の食事をする前、つまり起床時に服用するのがおすすめです。
SGLT阻害薬
SGLT2阻害薬は、余分な糖を尿と一緒に排泄する薬です。SGLT2は、尿に含まれている糖を血管に運ぶ働きをしています。このSGLT2の働きを阻害することで糖の再吸収を阻害し、血糖値を下げるのです。
インスリンの働きには影響しないため、低血糖の副作用が起こりにくいと言われています。血糖値を下げる働きのほか、心血管疾患による死亡リスクを下げる働きがあることもポイントです。糖と一緒に水分も排泄されるため、脱水の副作用に気をつける必要があります。
フォシーガ
ダパグリフロジンが主成分として配合された薬です。SGLT2阻害薬の仲間ではありますが、例外として服用時間が朝食時に限定されていません。1型糖尿病と2型糖尿病のほか、慢性心不全や慢性腎臓病にも適応があります。
カナグル
カナグリフロジンを主成分として含むSGLT2阻害薬です。1日1回、1回100mgを朝食前または朝食後に服用してください。2型糖尿病、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に適応があります。
スーグラ
イプラグリフロジンが主成分として配合された薬です。1日1回、1回50mgを朝食前または朝食後に服用してください。服用量は最大で1日100mgまで増量できます。25mgと50mgの規格があるため、用量の調節をしやすいことが特徴です。
ジャディアンス
エンパグリフロジンが主成分として配合されています。適応は2型糖尿病と慢性心不全の2つです。10mgと25mgの規格は2型糖尿病、10mgの規格は慢性心不全に使われます。食事の影響を受けやすいので、朝食前または朝食後に服用してください。
ルセフィ
ルセオグリフロジンが主成分として配合されたSGLT2阻害薬です。2.5mgと5mgの2つの規格があります。2型糖尿病のみに適応をもつ薬です。通常は1日1回、1回2.5mgを服用しますが、症状の経過に応じて1日1回、1回5mgまで増量できます。
αグルコシダーゼ阻害薬
αグルコシダーゼ阻害薬は、糖の吸収をゆるやかにする薬です。食事から摂った糖は、αグルコシダーゼという酵素によってブドウ糖へ分解されます。服用すると、ブドウ糖への分解が阻害されるため、食後の急激な血糖値上昇を抑えることが可能です。
αグルコシダーゼ阻害薬を服用中に低血糖を起こした場合は、ショ糖などの二糖類ではなく、ブドウ糖を摂取する必要があります。
ボグリボース
糖尿病の食後過血糖の改善、耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制の2つに効能効果をもつ薬です。食事の直前に服用することで効果を発揮します。重症ケトーシスや重症感染症がある方は使用できません。
ミグリトール
糖尿病の食後過血糖の改善に効果がある薬です。低血糖の副作用を避けるため、必ず食事の直前に服用してください。1日3回、毎食直前に1回50mを服用します。効果が不十分な場合は1回75mgまで増量が可能です。
スルホニルウレア系経口血糖降下剤
略してSU薬とも呼ばれるスルホニルウレア系経口血糖降下剤は、膵臓からのインスリン分泌を促すことで血糖値を下げる薬です。膵臓のβ細胞にあるスルホニルウレア受容体に結合し、インスリン分泌を促進します。
経口で服用する糖尿病の治療薬の中ではもっとも古くから使用されており、現在も多くの患者が使用しています。膵臓のβ細胞に働きかけるため、インスリンを分泌する力がまだ残っている方のみに有効です。
グリミクロン
グリクラジドが主成分として配合されています。スルホニルウレア系経口血糖降下剤は血糖値を下げやすい分、低血糖の副作用のリスクもあるため、服用中はブドウ糖を携帯しておくと安心です。通常は1日40mgから開始し、40~120mgで維持します。
インスリン抵抗性改善薬
インスリン抵抗性改善薬はチアゾリジン薬とも呼ばれており、インスリンの効きを良くする薬です。インスリンが正常に分泌されていても、効きが悪ければ血糖値は思うように下がりません。
インスリンに対する反応が鈍くなっている場合は、インスリン抵抗性改善薬が有効です。食事療法や運動療法をしっかり行っているにもかかわらず血糖コントロールがうまくいかない2型糖尿病の方に用いられます。
ピオグリタゾン
2型糖尿病に効果がある薬です。食事療法や運動療法を行ったりほかの糖尿病治療薬を使用しても血糖コントロールがうまくいかなかったりするときに用いられます。ピオグリタゾン自体がインスリンの分泌を促すわけではないため、低血糖の副作用は起こりづらいと言われています。
速効型インスリン分泌促進剤
速効型インスリン分泌促進剤はグリニド薬とも呼ばれています。インスリンの分泌スピードを早めて食後の血糖値を速やかに下げる薬です。糖尿病の方は、血糖値が上がるタイミングとインスリンが分泌されるタイミングが合わないことが少なくありません。
速効型インスリン分泌促進剤を使用すれば、食後に血糖値が上昇するのに合わせてインスリンが分泌されるため、血糖値の上昇を防ぐことが可能です。
シュアポスト
レパグリニドが主成分として配合されています。膵臓にあるβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促す薬です。2型糖尿病の治療に用いられます。速やかにインスリンの分泌を促す働きがあるため、食事の直前に服用してください。